ビル・ゲイツの設問には、論理思考に関連して確率をベースにした応用問題が多々出されますが、今号の設問に対する皆さんの反応はどうでしたか?
次に生まれた子が男か女かなど、直感からくるその確率は当然1/2の50%に決っていることなのに、「どうしてこんな設問を?」という疑問を持った方も、中には少なからずおられたかもしれません。
それも無理のないことで、たしかに普段の生活の中で、もしも何気なくこの設問のような内容で質問されたら、同様に感じる方もかなり多く見られるのではないかと思います。
落ち着いて冷静にいられるときでも、このような反応があるであろうと予想されるということは、ましてや面接試験のように制限時間が設けられ、緊張している場所で確率の値そのものを問う問題が出されれば、とっさに同じように思う受験者も多くいるのではないかと思われます。したがって、これはそのような疑問を持つ人のための設問と言ってもいいかもしれません。
しかし同じ内容の質問を受けるにしても、普段の生活の中で聞く場合と面接の会場で聞く場合とでは違う反応になるはずで、面接の場においては瞬時にして本質的なことに入っていくものと考えられます。
というのも、もしも受験者なら、「そんなわかりきった問題を改めて面接試験で出すわけがない、何かあるはずだ」と、すぐに頭の切り替えができる立場にあるからです。
もちろん最初から問題を正しく理解する皆さんも多いと思いますが、実はこのような書き出しにしたのは、こうした疑問が出てくる背景を見ていくことで、正解への一番わかり易い説明ができると思われたからです。
さて、確率の基本は、起こり得るすべてのケースの中で該当するケースの割合はどれだけかを数字で表わすもの、と前回も説明しましたが、確率の問題の中には、その該当するケースが独立して起こる事象を問題にしているものや、或ることに従属して起こる事象を訊いているものなど、いろいろあるということです。
この独立と従属という2つの意味をわかり易い例で説明しますと、例えばトランプの52枚あるカードから無作為にハートのエースを引く確率は、前者の独立して起こる事象であり、それは1/52%です。これに対して、このハートのエースを引いたあと、さらに続いてクラブのエースを引く確率は?という問題になると、2枚目は1枚目に続いて起こる事象を訊いていることになり、従属の問題となるわけです。
この2枚目が単独で起こる確率は1/51%でしかありませんが、1枚目に続いてこの事象が起こる確率は1/52% x 1/51%と大きく違ってくるわけです。
では、当設問の解説に移ります。
この問題の中身をよく読みその真の意味を理解しないと、どうしても「次に生まれた子が男か女か」という問いとしか受け止めないことになるのです。しかし注意深く読めば、この独立・従属をきちっと見極めて正解へと進むことができるわけです。
つまり、当設問で「もう1人の子も女の子である確率はどれだけか?」の部分を「もう1人の子が女の子である確率はどれだけか?」という具合に、「も」を「が」にして単独形として受け止めてしまうと、前文の1人が女の子であることとはまったく無関係に、単に「もう1人の子」というそのこと自体が起こる独立した事象として解釈してしまいがちになるということです。
この設問が、兄弟姉妹という従属現象が起こっている組合せという形で訊いている確率問題だということがわかれば、あとは簡単だと思います。
2人の子供を持つ組合せは、図のような4つで、その内、わかっている1人が女の子であるということは、残るは(男−女)(女−男)(女−女)の3つの組合せのどれかでしかありません。この3つの中で、もう1人も女の子である(女−女)は1組しかなく、したがってその確率は1/3ということになるわけです。
当設問の背景は、もちろん確率という問題がベースにあるわけですが、いかに注意深く問題を理解するかということと共に、回答までのスピードも見ているということです。
このスピードということ考慮に入れれば、見方や考え方によっては難しくもあり、またポイントがわかってしまえば易しくもある問題として、一般に広く使われてもいい格好の面接試験用パズル問題ではないでしょうか。
では解答です。
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