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あなたはビルゲイツの試験に受かるか?
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その6:人間の盲点、落し穴はこんなところにも
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 さて、次の問題でビル・ゲイツは応募者の何を見ようとしているのでしょうか。

問題 設問6 新築した家の玄関に、3つの部屋それぞれに通じる照明用スイッチが3つ付いている。いずれの部屋の照明も玄関からは見えず、互いの部屋からも見えない。どの部屋でもいいが、最初ある部屋に1回行くだけでその部屋用のスイッチがどれなのかを、確信を持って当てるにはどうするか。



 これは、明かりがついているかどうかを確認することによって、部屋のスイッチを判別しようという設問ですが、もしもこの家の照明が2つの部屋にそれぞれ通じる2つのスイッチだけからできあがっているのならば、簡単にそのスイッチを特定できます。
 つまり、1つのスイッチをオンにして部屋に行き、明かりがついていればそれが該当するスイッチであり、残ったもう1つのスイッチがもう1つの部屋用で、もしも明かりがついていなかったならば、その逆であることは言うまでもないからです。
 しかし問題を複雑にしているのは、スイッチが3つあってその1つを特定せよということです。つまり、すべてのスイッチを切っていれば、明かりも消えて部屋へ行っても何もわかりません。また、どれか1つのスイッチを入れても、行った部屋の明かりがつく可能性は3分の1の確率でしかなく、残った3分の2の確率で明かりはつかないので、残りのうちのどちらのスイッチがその部屋用のものかは皆目わからないというわけです。またスイッチを一度に2つ、あるいは3つ入れてみたところで、問題は変わらず、そのうちの1つを特定することはできません。
 しかし設問を次のように置き換えたら分かり易くなります。“行った部屋に3つのスイッチが付いており、そのうちの1つだけがその部屋のものだが、1回だけの操作でその部屋用のスイッチを当てよ”という問いに直してみるのです。そして視点を変え、この設問をスイッチ側からではなく、電球側から見るわけです。
 するとこれは、オンとオフの2つの識別子(電球側)だけで3つのもの(スイッチ)を識別せよ、といっていることと同じなのです。ここで明らかになるのは、3つ目の識別子がないとこれを解くのは不可能だということです。ビル・ゲイツ流の解釈の仕方をしますと、「この問題を解くには2ビットの情報がないとダメで、1ビットだけでは不足」ということになります。しかしこれが回答ではありません。
 ここで、まずこの情報不足に応募者が気付くかどうかを出題者側は見ています。そしてすぐに“不可能”と回答する応募者は「残念でした」という結果をもらいます。もっとよく考えなさい!ということです。
 オン、オフの2つだけの情報以外に、何か外の識別子がないか、なければそれを作り出す工夫など、この設問には創造的発想を求める背景が込められているのです。
 では、もしこの3つのスイッチが光量を調節できるスイッチだったとしたら、どうでしょうか。1つのスイッチは切る、1つは入れる、1つは薄暗い明かりで入れる。そうすれば、電球の明かりの状態を見ることにより、どのスイッチがそれを操作しているのか簡単にわかります。でも、この設問では光量調節型のスイッチだとは言っていません。通常のスイッチとして考えるのが普通ですから、これは回答にはなりません。
 ところがです。この光量調節型スイッチという考え方は、ある重要なことを示唆しているのです。このことは、3つのうちの1つのスイッチで、オンでもオフでもない「中間」の状態を作り出せたら、問題は解決するということを意味しています。
 ここが、応募者の柔軟性を見ようという出題者側のポイントです。識別を助けてくれるのは、何も視覚だけとはかぎりません。人間には5感というものが備わっており、視覚1つだけにとらわれることなく、それら5感のいずれかでもフルに活用できないかと思いを巡らせる柔軟性があるかどうかを問うているのです。「盲点! 落し穴はこんなところにも」の思いではないでしょうか。そして解答を見れば、時間差までも創造していることがわかります。
 システムやソフトの開発では、1つのことにとらわれない幅広い創造的発想こそが難しい問題を解決し、次々と新しいものを生み出してくれる原点だという、ビル・ゲイツらの思いが込められています。
 また先ごろ、時価総額で世界第2位の規模を誇る東京証券取引所の売買が3時間も停止に追い込まれるという事件が起こりましたが、原因はコンピューターソフトの設定ミスによるものでした。過去にも、みずほ銀行の発足直後に発生した、現金自動出入機(ATM)障害や二重引き落とし、送金トラブルといった大規模なシステム障害もまた、ソフトウエアの不具合によって引き起こされたものです。この他、大証、名証、各銀行などで、大なり小なり社会的に迷惑をかけたシステムトラブルも、ソフトウエアの不備が原因でした。
 これらは単なる設定ミスによるトラブルから、まったく思いもよらない想定によって引き起こされたトラブルまで、すべて事前のあらゆる角度からの充分なプログラム検証がなされていなかったために生じた問題です。
 ビル・ゲイツの設問の背景として、想定外のことまでにも細心の注意を払っているかどうか、これまでの設問も含めそこを見る意図が隠されているものも多々ありますので、このことにも注意を払いながら見ていってください。
 では、解答です。

正解 正解6 3つのスイッチをそれぞれA、B、Cとします。まず、Aのスイッチを入れ、BとCは切っておく。5〜6分してからAを切り、Bを入れる。そしてすぐ部屋にいく。明かりがついていれば、その部屋のスイッチはBで、明かりが消えていて冷たければC、温かければA。

 もちろん1つの部屋へ行ったその足で次々と残りの部屋へ行ってみれば、再びスイッチに触れることなく、すべて特定できることもわかります。
 では、次の設問はどうでしょうか。やはり、その出題背景を考えながら解いてみてください。

問題 設問7 50個の白玉と50個の赤玉、それに2つの箱がある。この100個の玉をバラバラに2つの箱に入れるものとする。目をつぶって無作為に一方の箱を選び、さらにその中から無作為に1個の玉を取り出すとしたとき、白玉を引く可能性を最大にするには、最初どのように2つの箱に玉を入れておけばいいか。

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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

執筆者紹介


執筆者 梶谷通稔
(かじたに みちとし)

テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)

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