当設問のやっかいなところは、導火線の材質が均一に出来ていないということからくるものです。一本の導火線を半分の半分、つまり4分の1に正確に折り曲げ、その一端に点火してから、ちょうど3番目の折り目、つまり3分の1が燃え尽きた時点で45分になるというのは、あくまで材質が均一の場合で、そのような小学生でも解ける設問であるはずはなく、またそうであれば導火線が2本も必要ありません。
2本あるということから、お互いを繋げて、あるいは重ねてみることも考えられますが、たとえば繋げた場合、燃え尽きるのに合計2時間になるだけの話で、それが1本1時間の場合と決定的に違う判断基準となるような題材なり、あるいはまた解答に至るヒントを提供してくれるわけでもなさそうで、問題の本質に何ら変わりはないようです。
またその2本を十字状に重ね合わせ、4つの端のうちの1つに火を点けてみたらどうか。この場合、2本が重なり合っている交点まで燃えて来ると、その交点で火は3方向に分かれて燃え進みますが、最初に火を点けた導火線の直進方向の1本が燃え尽きるまでは当然1時間ですが、それと交差しているもう1本の導火線の両端に火がそれぞれ到達する時間などは、たとえ交点がどこにあったとしても判断するすべもなく、どんなふうに重ね合わせるにしろ、何ら解答に迫るような糸口は見い出せません。
ここまできてわかる重要なことは、「長さからは絶対に時間が計れない設問」だということです。ビル・ゲイツの意図するところは、いかに早くそれに気付くかなのです。そう考えると、あとに残るのは火を点ける場所と、そのタイミングしかないということになります。
長さとは無関係な場所で火を点けられるところといえば、両端しかありません。そこで1本の導火線の両端で同時に火を点けたら、という発想が自然と湧いてくるはずです。そして全部燃え尽きるのに1時間。もうおわかりだと思いますが、両端から燃え進んだ火が途中のどこかでぶつかる時点、そのときがちょうど火を点けてから30分経っていることになります。2つの合計が1時間になるわけですから。
つまりこの種の導火線の場合、両端からの火がぶつかるまでの時間は、全体が燃える時間の半分になるということです。これがわかればあとはもう簡単。
45分の中の30分の測定はこうしてできますから、残りの15分もこの要領で考えていけばいいわけです。15分は30分の半分ですから、全体が30分で燃え尽きる導火線を意図して作ればいいわけで、ここに2本目の導火線が用意されている理由がわかると思います。
1本目の導火線の両端に火を点けると同時に、2本目の導火線の一端にも火を点ければ、1本目がちょうど燃え尽きるその時点で、2本目も30分燃え進んでいます。そして、そこにはまだ30分の導火線が残されているということです。
だからこの時点で2本目の導火線のもう一端に火を点ければ、それから火がぶつかるまでは15分かかるということになりますので、これでめでたく解けたことになります。
さて、当設問の背景は前述しましたように、「導火線の長さを云々して火を点けたのでは、絶対に時間が計れない」ということにいかに早く気がつくかで、こうして1つの見方だけでは解決しないことがわかれば、その見方を早く切換える資質、それなら両方の端っこへ同時に火を点けてみるという発想、一種のひらめきができるかどうかを見ようとするものです。
そんな切換えやひらめきがなくとも、ちゃんと解けたという人は、結局は知らず知らずのうちに、このロジックを辿って正解に至っているということなのです。
では解答です。
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