初めてこの設問に出会うと、まず最初に誰もが砂時計をひっくり返す様を、頭の中で思い浮かべると思います。そしておそらく、最初に考えつくのが図1のような始め方ではないでしょうか。
そして9分に辿り着き、さらにその中のステップAを繰り返すことによって、そこから2分間隔の時間が計れることから、順次11分、13分、15分、17分、19分もわかるというものです。残るは8分、10分、12分、14分、16分、18分ということで、それらをあとでじっくり吟味しようと・・・。
たしかにこの方法で、まずは11分、13分などが計れます。しかしそこで満足してしまうと落とし穴に入ってしまいます。
この設問は、限られた値しかない計測器で量を計るという問題で、これは設問11の2つの限られた容量のバケツを使った問題と非常によく似ています。そのとき何をやったかと言いますと、式を使いました。そこでは一定の容量や空きを意図して作ってみることにより、すっきりとした形の解答を見落としなく得ることができました。
そこでこの砂時計の問題も同様に、式を使って「計る」から「作る」をやってみます。まず5と7の2つの値を使って加減算をやってみます。最初に加算。5+5=10、5+7=12、7+7=14、5+5+5=15、5+5+7=17、5+7+7=19 が作れますから、5分計と7分計をこの式に従って順次ひっくり返して(以下、反転)いけば、それぞれすっきりとした形で10分、12分、14分、15分、17分、19分(図2)が計れることがわかります。ここに出てくる15分、17分、19分などは3回の反転で済みます。図1ではそれぞれ6回、7回、8回もの反転が必要で、すっきりさ加減がはっきりと出てきます。
設問の順序にしたがって、図1のようなところから入っていきますと、どうしても2つの砂時計の組合せをあれこれ難しく考えてしまい、これらすっきりした形の解答を見落としがちになり易いのです。
次に5と7の減算式によって作れる正の数を考えてみます。 まず7−5=2で2が出ます。さらにこの2を使って3(=5−2)を新たに、またこの3を使って4(=7−3)を、そしてさらにこれらから1(=4−3)も作ることができます。
実際にこれらの数は、2つの砂時計を同時に、あるいは交互に反転することにより、時計の上や下にある砂の量として、その途中で作りだせる数であることを意味していますから、こうして出てきた1、2、3、4、を利用すれば、すでに前述の加算式で作り出されている数とともに、残りのどんな数も作れるということになります。
しかし減算の式からもわかりますが、まず2が最初に作られ、そして次に3が、さらに4は3ができてから、また1は4ができた後はじめて作られますから、これら目的の数を導き出すにも順序があることになり、たとえばいきなり5分計を2回反転したあと、5+5+1というような形で11を作るというわけにはいきません。
ではまず、7−5=2で作られる2から始めます。この式からわかることは、7が2と5に分割されていて、5(5分計)はそのままの状態を意味しています。だからこの5に2を順次繰り返し加えていくことにより7、9、11、13、15、17、19ができます。これは冒頭でコメントした図1そのものです。
同様に考えて次に作られる3は、5−2の結果で、そのままの状態にある7にこの3を繰り返し加えていき、結果、10、13、16、19が作れます。
(図3)
同様に4が作られるのは、7−5=2、5−2=3、7−3=4と、3つのステップが必要で、つまり砂時計でいえば、3回の反転の後、作られるということです。分かり易くするため図示すれば、図4のようになり、10分のところでできています。ですから、この10に4を繰り返し加えていけば14、18が作れます。
(図4)
そして1を作れるのは、4−3=1のようにそのあとで、4つのステップの4回反転が必要であることがわかります。図5の14分のところです。そのあとで8(=1+7)を作ることができますが、最初の作業からは14+8=22分も経っていますので、砂時計の反転スタートからは8分を計れません。その途中で初めて計ることができます。
5と7を使った「差」ということを念頭に、最初から
1=5x3−7x2 (5分計3回と7分計2回反転との差)
2=7−5、 (5分計と7分計それぞれ1回反転との差)
3=5x2−7、 (5分計の反転2回と、7分計との差)
4=7x2−5x2、 (5分計及び7分計それぞれ2回反転との差)
の式を使って1、2、3、4を導き出し、あとは順次、加算によって目的の数を作っていく手順もありますが、この場合、他の方法による複数回答を見逃しがちになりますので注意が必要です。
前回の時間の測定に関連して、この設問は私の考えた問題ですが、この種の問題は設問11と同様に式を考えることにより見落としがなくなり、しかもすっきりとした形で解けてきます。また設問の順序に惑わされて具体的な部分から入って行きますと、つい簡潔で本質的な解を見落してしまいがちになりますので、まず大づかみが大切です。
またすべての分が計れるなら、なぜ問題を8分からX分までの各分を計るにはどうすればいいか? としなかったのかという疑問がわきます。その理由は、一般化ができるということを事前に示すような設問にしますと、上記の1、2、3、4分の差を作ればいいというヒントを簡単に与えかねないこと、さらにどれくらいよく考えてこの制限範囲内での複数解答までだせるかを見ようとしたからです。
それでは解答に移りますが、文章にすると長くなりますので掲載の図を使います。
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