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その49 複雑に見える問題は、単純なところから始める
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 前問ではコンピューター原理をうまく応用することにより、解答へと近づくことのできる数学分野の問題でしたが、それでも機転を利かしてうまい処理方法を思いつかないと、途中でつまずいてしまいがちな設問でした。

 さて、今号の設問はどうでしょうか。論理思考の極意に触れるような設問ですが、それでは解説に入ります。


問題 設問49 50組の夫婦のいる村の男全員が、不貞をはたらいている。小さな村ゆえに、村の女はみな、自分の夫以外の男が不貞をはたらけば、即座にそれがわかる。しかし、自分の夫が不貞をはたらいてもわからない。村の厳しい掟では、自分の夫が不貞をはたらいたことを証明できる女は、その夫を即日殺さなければならないとしており、この掟に逆らおうなどと思う女はいない。ある日、決して過ちを犯さないことで知られる女王が、この村を訪れた。そして女王は、少なくとも1人の夫が不貞をはたらいていると宣告した。そこでこの村はどうなるか。

 ペアの違反というゲーム形式の、論理的には同じ内容の問題として、以前、IBM研究所の論文に掲載されたほど、当設問が問うロジックの中身は格好の論理思考の問題であり、論理パズルの中でも傑作な部類に入るもののようです。

 問題の中身を一面からみれば、隠れているものを論理的に考慮しながら母音と偶数のカードを特定する設問25や、100台のロッカーをトグる対象の多い数を取り扱う設問43など、これらをミックスしたような印象を思わせる問題であり、またある一面から見れば、真実と嘘を言う2人の場合の設問37を解いたあとで、さらに1人増えて、しかもその1人が真実も嘘もどちらも言うことがあるというチャーチル、ヒトラー、スターリンの設問38のように、人数が増えるにしたがってますます混乱し、しっかりと論理思考的に考えなければ泥沼に引き込まれてしまいそうな問題でもあります。

 それならば本問ではどこに着眼すれば、その手がかり、あるいは糸口、突破口を見い出すことができるのでしょうか。
 この種の問題では、まずは設問の内容をしっかりと把握することから始めるのが大事です。その大きなポイントをあげると、村の夫全員が不貞者であることで、それを知っているのは、問題の論理思考を託されている我々だけであること。また、妻たちは自分の夫の不貞はわからないが、他の夫の不貞ならばすべてわかること。さらに不貞の相手として女王も考えられますが、設問文のとおり彼女は対象外であること。

 そしてもう一つ重要なのは、「夫が不貞をはたらいたことを証明できる女は、その夫を即日殺さなければならない」の中に出てくる「即日」という言葉です。
 この「即日」という言葉が何を意味しているのか。もしもどの夫にも何事もなくその日が終わったら、その日の即日粛清(しゅくせい)はなかったということですが、その何事もなかったことに起因する事実から、ではその次の日は・・・と、この言葉は自然にその先の論理思考をうながすように仕向けた言葉だということです。
 これらの前提をしっかりと頭の中に留めていただいたあとで、それでは解説に入ります。

 前回の設問でもそうでしたが、これまでご説明してきたように、多くの数を取り扱う設問での糸口、突破口は、まずは少ない数でやってみることから始めることです。
 そこで50組などという大きな組数ではなく、この村にたった1組の夫婦しかいなかった場合ならばどうか、を考えてみます。
 しかしこの場合、夫婦間での不貞などというものは存在しませんから、相手があるとすると女王ということになりますが、彼女は決して過ちを犯さない女王です。したがってこの場合、当設問は問題として成り立たないので、この1組の場合は除外し、2組の夫婦の場合から考えてみることにします。

 ここで便宜上2人の妻をa、bとし、それぞれの夫をA、Bとします。
 命題の「すべての夫は不貞をはたらいており、自分の夫以外の不貞は他の妻たちにわかる」ということから、aはBの、bはAの不貞を知っていることになります。だから女王が、「少なくとも1人の夫が不貞をはたらいている」と宣告しても、この2人の妻は「その通り、確かに1人は不貞している」として、それぞれ自分の夫の不貞がわからない以上、その日の粛清は起こりません。

 ところがこの日に粛清が起こらなかったということは、aはBの、bはAの不貞を知っていたからこそ、はじめて粛清のない結果が出るのであって、この結果はAとB共に不貞をはたらいているという厳然とした背景を告げていることになるわけです。2組だけだからわかるということです。
 したがって、粛清が起こらなかった翌日になると、その事実を告げる背景にaおよびbが気づく、つまり、わかるということです。だから、A、Bともに、翌日の2日目に粛清されることになります。皆さんにはわかり易いような解説を心がけているつもりですが、ここまでの論理はわかりますよね。

2組だけであったらのケース

 では3組の夫婦だったらどうか。同様に、3人の妻をa、b、cとし、それぞれの夫をA、B、Cとします。
 ここで、チャーチル、ヒトラー、スターリンの設問38を思い出した方は、解答に一歩近づくことになります。と言うのも、その解説で「地頭力の働く人であれば、この残された1回の質問、つまりこの場合、一番最初にスターリンを見分ける質問をするとして、前回設問37で解説したこの基本ベースの質問を利用できるのではないだろうかとの考えに至る」と述べましたが、それと同様な考え方をして、3組の夫婦の場合、この2組の場合を基本ベースとして展開できるのではないかと、ひらめくことによって解答への道が開かれるからです。

 3組の場合、命題からaはB、Cの、bはA、Cの、cはA、Bの不貞を知っていることになります。
 ここでaを例にとって、彼女ならばどのように考えるかを見てみます。もちろん自分の夫であるAの不貞の有無についてですが、その有無はbとcが知るところです。そこでこのAの不貞の有無を2つのケースに分け、aがどう考えるかという点を見てみます。

 2つのケースで、aが巡らす考え方として、

 ケース1 : もしも自分の夫Aが不貞していないとしたら・・・
 Aが不貞していないことを知っているbとcは、女王の言葉から、BかCの少なくとも一方が不貞をはたらいていると考えるはずだ。するとこの場合、前述したような2組の夫婦のケースを考えればいいことになる。その結果は、翌日、粛清が起こる。
 ケース2 : もしも自分の夫Aが不貞しているとしたら・・・
 Aの不貞を知っているbとcは、女王の言葉だけからでは自分の夫の不貞を特定できない。だから翌日になっても粛清は起こらないはず。

 したがってこの2つのケースから、翌日の粛清が起こるか、起こらないかによって、夫Aの不貞が判断できる、と。

 そこで命題により、Aも不貞していることから、現実にはケース2の状態となり、翌日の粛清は起こらないことになります。この日に粛清が起こらなかったことにより、その翌日、つまり3日目に至って初めてaはケース2として夫の不貞を確信できるわけです。
 bもcも、aと同様な思考の仕方で自分たちの夫の不貞をこの段階で確信することになり、結果、3組の夫全員の粛清が翌々日の3日目に行われるということです。

3組だけであったらのケース

 ここまでくれば、もう地頭力のある方であれば結論が見えてくるはずです。
 夫婦が4組の場合は、前述3組が入れ子の状態で入っていると考えればよく、その3組は不貞をしている4人目の夫が加わったために、3人の妻たちは前述の3日目までは夫の不貞を確信できなく、粛清が行われないことになります。この3日目に粛清が起こらなかったことにより、初めて4人の妻たちはそれぞれ夫が不貞をしていることを理解し、4日目に4組全員の夫の粛清が行われるということです。

 このように順繰りに考えていけば、どんなに組数が増えても論理的には同じことになり、したがって50組の場合には、50日目に全50組の夫の粛清が行われるということになるのです。

 前にも述べましたように、設問の中に出てくる数の大きさ、あるいは多さに惑わされてはいけないということです。そんな場合はまず少ない数の場合をやってみること、あるいは、テーブル上に10円玉を敷き詰めていく設問22のように、極端なケースでやってみることが、問題を解く突破口を与えてくれるということです。

 この設問の背景は、スピード処理がますますもって頻繁に要求されるようになった今日のビジネス界で、目の前の量や数の大きさや多さに惑わされることなく、また、このような突破口にすぐに入れるかどうか、それらを問うと同時に、解説したような論理思考ができるかどうかを見ようというものです。

 では、解答です。


正解 正解49 50日目に、全50人の夫の粛清が行われる。


 では、次の設問を解いてみてください。


問題 設問50 ここに3枚のカードがある。1枚目のカードは両面が白。2枚目は両面が黒。3枚目は片面が白で片面が黒。カードをよくかき混ぜてその中の1枚を引き出したら、白面が出た。ではそのカードの裏片面も白である確率はどれだけか。


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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。


梶谷通稔 【執筆者】 梶谷通稔 − かじたに みちとし
1939年生まれ 早稲田大学理工学部応用物理学科卒

元:日本を含む全アジア及び豪州地区を統括するIBM太平洋地区ソフトウエア・ビジネス・エグゼクティブ
現在:(株)ニュービジネスコンサルタント 代表取締役社長/日本IBM GBS 顧問/東北芸術工科大学 大学院客員教授/(株)アープ 最高顧問
○各種記念行事、イベント、研修などでの講演。
○企業発行誌、教育機関紙、外郭団体誌などでの連載執筆。
○ネットサイバー企業の起業家教室における「リーダー学講座」と
  「e−ビジネスやインターネット講座」を担当。
  出版 1988年  『企業進化論』(日刊工業新聞社刊) ベストセラー
1989年  『続・企業進化論』(日刊工業新聞社刊) ベストセラー
2009年  『成功者の地頭力・あなたはビルゲイツの試験に受かるか』
      (日経BP社)
  連載 1989年〜2009年 『徒然草』(CSK/SEGAの全国株主誌)
1996年〜2003年 『すべてが師』(日本IBMのホームページ)
2000年〜進行中 『インターネットの世界』(教育機関紙他)
  講演 主な分野とタイトル
・日常実例が示す・あなたは、脳の1%すらも使っていない?!
・成功する人・しない人を分けるもの、分けるとき
・マネジメントとリーダーシップとの違い

※この連載記事の著作権は、執筆者および株式会社アープに帰属しています。無断転載・コピーはおやめください。

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